【救われた映画】『シザーハンズ』拝啓 : ティム・バートン監督様
こんちには!Moekaです。
#救われた映画
これ、最近Twitterで私がフォローさせて頂いている方がたくさん使っているタグの一つなんです。救われた映画。この映画に出会って救われたこと、ふっと楽になったこと、このタグのツイートを見ていると何だか胸がいっぱいになる気持ちです。私も考えてみました、#救われた映画。映画そのものに毎日が助けられている気がします。挙げたらたくさんあるのですが、今回はこの作品について改めてお話しようかと思います。
ティム・バートン監督『シザーハンズ』(1990)
言わずとしれたティム・バートン監督の代表作であり、ジョニー・デップの出世作でもありますね。いやめっちゃいい映画です...何でこの映画が#救われた映画 かというと、作品の内容とは少し離れてしまうのですが“ティム・バートン監督を知ることができたから”という理由です。もちろん、そのストーリーもですが...😂
でも私以外にもバートン監督の作品に救われた、という方はたくさんいらっしゃるのではないかと思っています。すごく抽象的な表現ですが、観終わったあと何だか“とにかく優しい気持ち”になりませんか。笑 今回はティムバ作品がもたらす魅力を、『シザーハンズ』を中心に書いていこうかな。
(この記事は映画『シザーハンズ』
ティム・バートン作品のネタバレを含みます)
異形の天使の悲恋物語『シザーハンズ』
ご存知の方が多いかと思いますが『シザーハンズ』改めてざっとあらすじを。
昔々、街から少し離れた大きな屋敷に住む発明家は人造人間“エドワード”を作り上げます。しかしエドワードが完成する直前に発明家は死亡!エドワードは手がハサミという未完成の姿のまま、残されてしまいます。屋敷に一人ぼっちのエドワード。
ある日ペグという女性が化粧品セールスのために屋敷を訪れ、そこでエドワードを発見!かわいそうに思って家へ連れ帰ります。そのペグの娘が、ウィノナ・ライダー演じる美しい女の子キム。エドワードはキムに恋をするのですが、キムのボーイフレンドであるジムがブイブイ言わせてきます。最初は戸惑うものの、人々の庭の植木を刈ったり奇抜なヘアスタイルをカットしたりして人気者になるエドワード。キムも心優しいエドワードに惹かれるようになりますが、ジムが嫉妬しちゃうわけです。そしてある事件をきっかけにエドワードは街を終われ、再び屋敷に戻ると。(最後ジムの死に方があっけなさすぎて、ちょっとおもしろいです。)
ティム・バートンが描くキャラクターたちはみんな少しいびつで、ユニークで、悪役さえも愛おしいですよね。『バットマン リターンズ』(1992)のペンギンなんかもう、キモカワ代表みたいな感じじゃないですか。笑
さて、これは色々なティムバ作品に言えることであり、この『シザーハンズ』もやっぱり“ティム・バートン自身の物語”であると思います。まずめっちゃそっくりだし、髪型も...(悪口じゃありません)
(笑)
バートン監督の作品には共通している大きなテーマがあります。それは“父と子”。『ビッグ・フィッシュ』(2003)『チャーリーとチョコレート工場』(2005)でも“父親の不在、父と子の確執”が描かれていますよね。『シザーハンズ』でも、エドワードの父親代わりである発明家は彼を残して死んでしまいますし。バートン監督自身も「僕は決して楽しい家庭環境ではなかった」と語っています。
小さい頃からおばけや怪獣、昔のホラー映画が大好きだったティム・バートン。きっと家で絵を描いたり映画を観たり、本当にエドワードのように一人で過ごしていたのかもしれません。エドワードは手にハサミがあり、外見こそ奇妙なもののとても心優しく、そして静かであまり喋らない青年ですよね。キムといい感じになってもマゴマゴしてしまう。でも植木を上手にカットしたり、個性的なヘアスタイルを作ったりすることはできる。人とうまく接することはできないけれど、何か自分だけのものを生み出すことができる。バートン監督もそんな少年時代、青年時代を過ごしたのではないかと思わされます。
エドワードが連れてこられた街。パステルカラーの家が並んでいるけれど、なんかちょっと変ですよね。笑 最近私も友達から聞いたのですが、ティム・バートンの出身地カリフォルニア州バーバンクも、本当にこういう街並みなんだそうです。同じようなこんな家が並んでいて。奇妙にカラフルな街の中で、エドワードだけ白黒カラー。色彩からして浮きまくってますもんね。笑 きっとエドワードのように窮屈な思いをしていたことでしょう。エドワードも結局は自分の元の屋敷に戻ります。
でも何でこんなにこの作品を観ると泣けて、ティム・バートン作品を観ると暖かい気持ちになれるのかなあと。それはバートン監督が、“自身の経験を受け入れて作っているから”ではないかと思います。
最近気付かされたことなのですが、思えばティム・バートン作品って「昔、こういうことがあってね〜」って語り口調の映画が多いですよね。『ビッグ・フィッシュ』もお父さんの昔話だし、この『シザーハンズ』もおばあちゃんになったウィノナ・ライダーが孫に語って聞かせます。自分の経験であるのにまるで昔話みたいに、“誰かに語って聞かせる”という形。バートン監督自身にとって自分の父親との確執、子供のころの孤独感は良い思い出ではないはずです。そんな自分の決して幸せではないものを受け入れなければ、ああやって語って聞かせる...というようなことはできない木がするんです。
『ビッグ・フィッシュ』では今まで距離があった父親との和解が描かれていますよね。奇想天外な物語を聞かせる父親。でもその物語があって、“おばけや怪獣”という自分のクリエイターとしての原点がある。自己治癒のため、そして自分の弱さ...というかポジティブではない経験から生み出れたものってとても美しくて、それにしかない輝きがあるのだと思わされます。(なかなかうまい表現ができないのですが。)
最後、エドワードはあの街に雪をふらせますよね。自分を拒絶した、合わなかった街に。キムへの愛からきれいな雪を降らせます。過去の自分に対する「絶対大丈夫になるから、自分は好きなものを作ることができるから」という励ましにも思え、同じように悩む人への癒しにも思え、めちゃくちゃ泣けてきます。笑
私もなかなか自分のことを喋るのが苦手な子供でした。笑 「にこにこしなさい」って言われても、どういう表情したらいいか分からなかったり、「遊んできなさい」って言われても外での遊び方が分からなかったり(根暗)言いたいことはあるのに言葉がのどに詰まっちゃったりして。でも書く事は不思議と、上手ではないですけれど大好きでした。今と変わらず。笑 映画の事に関してライター活動をしていますが、いつかティム・バートン監督にお会いして「10代の時、あなたの映画に救われました」ってお伝えしたいなあ。
長くなっちゃいましたが、私の #救われた映画 でした!みなさんの心に残る、救われた映画は何ですか?