Bande à pierrot

ティム・バートン、テネシー・ウィリアムズ、アレハンドロ・ホドロフスキー。

【2017年振り返り】映画『メッセージ』考察 ヘプダポッド語が象徴するもの、ルイーズの変化について考える

 

こんにちは!Moekaです。

今日は2017年振り返り、新作編ということで

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『メッセージ(原題 : Arrival)』について書きたいと思います。

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素敵な作品でした。いろんな人と語り合いたくなる作品でした。でも『メッセージ』めちゃ難しい映画だと思います。「これはこういう映画だ!こういうテーマを描いている!」って一言では言い切れない映画だと思うんです。今回はルイーズが解読した“ヘプダポッド”の文字が何を表しているのか、時間と人生について、そしてこれを観た私たちがこれからどう“良い方向に”変化してった方がいいのか、ということについて書いていきたいと思います。

 

(この記事は映画『メッセージ』のネタバレを含みます。)

ジェレミー・レナーがいつだってムキムキな件について

 

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最初にすごくしょうもない感想を言いたいんですけど、知性的で優しい、のちにルイーズの旦那となる数学者を演じたジェレミー・レナー。「え、学者さんにしては筋肉やばくないですか?笑」って突っ込みたくなっちゃったんですけど(笑)、アメリカにはバッキバキに鍛えている教授の方がたくさんいらっしゃるみたいです...笑

 

それはさておき。笑 『メッセージ』が扱っているテーマは、いろんなことが言えると思うのです。

“コミュニケーションの大切さ、難しさ”であったりとか。

“平和の大切さ”であったりとか。

劇中には言語学の様々な知識も登場しますね。「それ知らん、後で調べよ」と思える、知的好奇心を刺激される作品でもありました。しかし、この映画が難しく感じてしまうのは、“人生”“時間”という超壮大なテーマを扱っていることも理由だと思います。

 

“円”というキーワード

“ヘプダポッド語”

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『メッセージ』での大きなキーワードは“円”だと思います。ばかうけ的宇宙船でやってきた宇宙人たちが発する“ヘプダポッド語”も、このような円形でしたね。

映画で何度も“アジア的要素”を感じた方も多いのではないか、と思います。中国軍がたくさん出てきたり、「ドォ〜ン」というまるでお寺の音を連想させるような劇中の音楽であったり。ヘプダポッド語の形も、これを連想させられます。禅画の一つである“円相”です。

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この“円相”は悟りや真理、宇宙全体を象徴的に描いたものだとされています。ヘプダポッド語によく似ていますよね...この“円相”は“円窓”と書き、「己の心をうつすもの」という意味で用いられることもあるのだそうです。

 

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劇中でこのヘプダポッド語が画面いっぱいに現れるシーンがありました。それはまるで世界地図を形作っているように見えました。たくさんの“円”があり、しかし同じように円を作っていても、一つ一つ少しずつ違う。このヘプダポッド語は人間の“人生の形”を象徴しているのではないか、と思います。人間の人生は何もない0のところから生まれ、そして死に、また0に戻る“円のようなものである、循環的なものであると。“輪廻転生”という考え方も仏教にはありますものね。

 

“終わりがない”問いかけ

 

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人間はどこからやってきて、どこへ去っていくのか。人生の意味や時間の定義...生きているうちに明確な答えが見つけ出せるか分からない壮大なテーマを扱う『メッセージ』。この映画も“円”のように、終着地点のない問いを私たちに投げかけてきているように思えてしまいます。

 

“時間”について

 

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私たちは毎日“時間”に無意識の内に触れて過ごしています。今この文字をタイプしている“時間”は次の文字を打った時にはすでに“過去”になり、次の文字をかく“未来”へと進んでいく...瞬間の一つ一つが積みかさなり時間となり、過去から未来へと流れていく。映画もルイーズのこんな台詞から始まりますね。「私は彼らが来るまで、時間は流れているものだと思っていた。」

しかし、『メッセージ』で人生の時間は、過去から未来に一直線で描かれているものではなく、もうすでに“存在している”ものとして描かれている。未来も“これから起こる、まだ存在していないこと”ではなく、“もうすでにあること”なのだと。  同じ平面に過去も現在も未来も存在しているものなのだと。

ルイーズもヘプダポッド語を解き明かしていく過程で、“未来”の映像もまるで“もうすでにあったこと”かのように、フラッシュバックして見えるようになります。彼女も宇宙人同様だんだんとすべての出来事が同時に起こっていると認識できるようになっていった時...彼女はどう変わったか。

ルイーズは、「じゃあ、これは何で起こっているのかしら?」と、結果に潜む目的を見つけようとするようになるのです。

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もうこれから起こるとわかっていることなら、じゃあなぜそれは起こるのか。何のためにそれは起こるのか。“結果”だけを見るのではなく、それの目的を汲み取ろうとする、考える。言語によって物事の考え方が左右される...という話が劇中にも出てきましたが、ルイーズはヘプダポッド語に触れるに従って、そのような考え方を身につけていったのだと思います。

 

実世界、私たちはこのような体験をすることはないと思いますが、“行動や結果の意図、意味、目的について考える”という視点は重要なことだと思います。“これから起こること”を想定して、それまでの自分の行動について考えるというのは。『メッセージ』を観てそんなことを考えさせられました。

 

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考えても考えても本当に円のように、ぐるぐるといろんなことが渦巻いてしまいます、『メッセージ』。笑 何度も観るごとに違う発見があり、そのたびに新しいことを考えさせられるかと思います。(あと、原作も読んでみなくちゃだ!)人生や時間について、「こういうものだ」ともっと自分自身で考えられるようになるのはもっと先だと思いますが、、“0から始まって0に戻る”中でいかに“永遠だ”と思うものを見つけられるか、それが素敵なことなのかなあ、と今は思います。