Bande à pierrot

ティム・バートン、テネシー・ウィリアムズ、アレハンドロ・ホドロフスキー。

パスポートは返したのか?映画『ブエノスアイレス』ウィンとファイはその後どうなるのか問題

こんにちは!Moekaです。

 

今日取り上げたい作品はこれも大好きな作品のひとつ

ウォン・カーウァイ監督による『ブエノスアイレス』(1997)です。

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この記事では『ブエノスアイレス』の主人公二人、

ウィンとファイは結局どうなるのか問題 について書いていきたいと思います。笑

 

(映画『ブエノスアイレス』のネタバレをしています)

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まずは簡単にあらすじのほうを...

舞台は香港の真反対にあるアルゼンチンの都市、ブエノスアイレス主人公はファイ(トニー・レオン)とウィン(レスリー・チャン)というゲイのカップルです。

愛し合っているにも関わらずぶつかり合うことが多いウィンとファイ。そんな二人は“やり直す”ためにアルゼンチンとブラジルにまたがる“イグアスの滝”を見に行こうと旅に出るのですが、そこでもまた喧嘩をして別れてしまいます。

ウィンと別れたファイは旅費を稼ぐため、タンゴバーのドアマンとして働くことに。そこにウィンが白人男性と共に現れます。ウィンはしばらくしてファイに「復縁しよう」と迫るのですが、ファイは突き放します。でも愛人に怪我を負わされたウィンが転がりこんできて、二人は復縁。いろいろ言いながらも嬉しそうにウィンの世話をするファイ。でも蜜月もつかの間、怪我が治ってきたウィンはぶらぶら出歩くように。ファイは独占欲から、ウィンのパスポートを隠してしまうんです。

ちょっと長くなりそうなので省略すると(笑)ウィンとファイは別れる→ファイは新しく出会った若い青年、チャンと仲良くなる→ファイは香港へと帰る→チャンの実家の屋台で、チャンが撮った写真を一枚盗む→「会いたいと思えば、人はどこへでも会いにいけるんだ!」と言って終わる。

こんな感じになります。笑

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初めてこの映画を観たとき、私は「きっとファイはまたウィンのところへ戻るのだろう」と思いました。それは「二人は永遠であってほしい!」という期待からの推測でした。でも何だか考察記事を読むと、「ファイはチャンのところへ行く」「チャンといい感じになるのか〜」といった内容のものが多くて...映画でも結局どうなるのか、明かされないですもんね。でもやっぱり、「ウィンとファイは、いずれ元に戻る」今はそう確信しています。そう思ったキーワードは“水”です。

 

ブエノスアイレス』は水の描写がとても多い。そしてこれ、お友達に気づかせてもらったことなのですがその水がちゃんと流れていない。というか、元に戻っているんです。

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まずウィンとファイが目指したイグアスの滝。このように滝が流れおちて、またもくもくと水蒸気(だよね?)が立ち上っています。このイグアスの滝も全て同じところからではなく、よく見ると二つの斜面(?)から水が流れ落ち、滝壺からまた水蒸気が生まれているんです。

 

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(血の写真ごめんなさい...)

ファイが良い給料のために転職した、食肉工場のシーンにて。トニー・レオン演じるファイは「こんな因縁はよ断ち切りたい」て顔をして、血をホースで流します。しかし、ちゃんと流れていない。そりゃ斜面にもなっていない地面にある血をホースで流したところで、綺麗になりませんよね。この血のシーンではホースの水圧によって一度は二つに分裂した血も、また一つの血だまりになるというシーンが映し出されています。まるで離れても離れても愛し合っているウィンとファイのように。

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物語終盤に差し掛かる頃、ファイが船に乗るシーンがあります。この船もどこかに進んでいる...という描写よりは、ただただファイを乗せてぐるぐる回っているように見えるんです。このように、“水”がいくら離れてもまた一つになるという、ウィンとファイの運命を表しているのではないかと思うんです。

 

ブエノスアイレス』といえばあと“パスポート問題”ですよね。笑 ファイはウィンのパスポートを持ったまま、結局返していません。ウィンはアルゼンチンから出ることはできない。ファイはあのあともしかしたらチャンのところに...行くかもしれませんが、それでもまたウィンのところに戻ると思います。

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レスリー・チャンが途中で返してしまったり、わりとすぐに終わる撮影がめちゃくちゃ伸びたりと予想外の出来事が起こった映画『ブエノスアイレス』。その未公開シーンや裏話が収録されたドキュメンタリー『摂氏零度』があります。もしかしたらこの“ファイとウィンはどうなるのか問題”について触れられているかると思い、観てみました。笑 でも残念ながら語られてはおらず...でも最後に、ウォン・カーウァイ監督のこんなコメントがありました。

 

「摂氏零度

そこには北も東も南も西もない

私はそこで さまよえる人々の心を知った」

 

恋は盲目、とよく言いますね。摂氏零度の世界、そこには方角もない。何もない。そこでずっとさまよっている。監督のこのコメントのように、ウィンとファイはどんなに離れたところにいても、ずっと二人の愛の世界の中でさまよい続けてるのでは、と思います。

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お互いの身を削りながら愛し合う、身体も心も溶け合って愛し合う、ウォン・カーウァイ監督の熱に満ちた美しい映像と合わさって、この『ブエノスアイレス』はとても美しい映画だと思います。大好きな作品...みなさんは“ウィンとファイがどうなるのか問題”どうお考えですか?