Bande à pierrot

ティム・バートン、テネシー・ウィリアムズ、アレハンドロ・ホドロフスキー。

【2017年振り返り】映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』に泣かされた話と、一味違うヒーロー映画の理由

こんにちは!Moekaです。

 

2017年もだんだんと終盤にさしかかってきたので、

今年観た映画をちょっとずつ振り返っていこうと思います!

第一弾は“2017年新作編”ということで、

イタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグです。

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この“鋼鉄ジーグ”という名前にピンとこられた方も多いかと思います。『鋼鉄ジーグ』はデビルマンマジンガーZなどの著者永井豪先生が手がけた、1970年代に日本で放送されていたアニメのあの『鋼鉄ジーグ』。ジーグは79年にイタリアでも放送されていたそうなんです。。幼い頃から日本アニメのファンだったガブリエーレ・マイネッティ監督が『鋼鉄ジーグ』を重要なポイントに作り上げたのが今回の映画、というわけです。

ちなみに制作は2015年、イタリアのアカデミー賞にあたるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では最多16部門にノミネート。主演男優賞、主演女優賞助演男優賞助演女優賞、新人監督賞、プロデューサー賞、編集賞の7部門を受賞しています。

 

アメリカン・コミックにはヒーローたちが多く存在しますが、フランスやイタリアでヒーローものっていうとあんまり浮かばないですよね...私も試写会にご紹介頂き観に行ってきたのですが、そもそも『鋼鉄ジーグ』のアニメは観たことがなくて。(ごめんなさい!!!)ちょっとはまるかどうか不安、というか「観て分かるかな?ブルブル」というところがありました。でも泣かされました。笑 なので今回はなぜ『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』が他のヒーロー作品と一味違ったかを書いていきたいと思います。これ、PRで書いているとかじゃないので安心してください...!笑

 

(この記事は映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のネタバレを含みます。)

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舞台はテロや犯罪が蔓延する荒廃した街ゴッサムシティ。ではなく、ローマ。主人公エンツォ(クラウディオ・サンタマリアも盗品を売りさばき、孤独なその日暮らしの生活を送っていました。ある日エンツォは警察に追われている最中、逃げるために川の放射性廃棄物のところにダイブ(ここがちょっと顔をそむけたくなるぐらい、うおお...となりました)。なんとそのことから、強大なパワーの特殊能力を手に入れてしまうのでした。エンツォは自分の能力をいかして、ATM強盗などしょうもない犯罪をはたらきまくります。その動画がYouTubeに流出して、ちょっとした有名人になることに。

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そんな中、唯一交流のあった男セルジョが殺され、エンツォはセルジョの娘アレッシア(イレニア・パストレッリ)の面倒を見る羽目になってしまうんです。この女の子アレッシアは日本のアニメ『鋼鉄ジーグ』の世界に陶酔している、ちょっと変わり者の女の子なんですね。エンツォのことを「あなたがジーグなのね!」と自分のヒーローと重ねあわせたりなんかりして。最初は鬱陶しがっていたエンツォも、だんだんアレッシアに惹かれるようになっていきます。でもそんな二人の行方を悪の組織のリーダー、ジンガロ(ルカ・マリネッリ)が阻んで...という物語です。

ヒーローってみんな格好いいじゃないですか。スパイダーマンもちょっと冴えない高校生っていう設定ですけれど、なんだかんだ格好いいじゃないですか。笑 でも『鋼鉄ジーグ』の主人公エンツォは最初のほう、本当にわりと“しょうもないおじさん”なんですよ。笑

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どのぐらいしょうもないかというと、部屋がすんごい汚い、ずっとポルノみてる、謎のプリン?ヨーグルト?みたいなのをずっと食べてる、お腹もボヨボヨだし。で、犯罪はたらいてるし。“このままでいっか”っていう放浪生活。無気力。格好悪いんです。ヒーロー映画ならではのスタイリッシュさ、みたいなのは皆無。笑 でもこのエンツォが終盤ではものすっごい格好良くみえてきて、「頑張れ!あなたは本当のヒーローよ!」って思えちゃうんですからすごい。(その理由は後々ご説明します。)

このエンツォ役を演じたのはイタリアの俳優、クラウディオ・サンタマリア(43)。すっごい体もこの映画だとだらしなかったし、うわあどんな人なんだろ...と調べてみたら、本当はセクシーがとまらない方でした。『007  カジノ・ロワイヤル』にも出演されているのですね!

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若い時のちょっとやんちゃな感じも素敵ですね!垂れた目がチャーミングでお色気抜群です。まあそれはおいといて、笑 この『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』が素敵な作品のひとつに“守るべき者、愛情を知った時、人は真のヒーローになれる”っていう普遍的なテーマを描いているからだと思います。

本当に何ももっていなくてどん底の状態から一人の女性に出会って、正義のために“誰か人のために戦うようになる”。ありがちというかいろんな映画、本でも取り扱われているテーマだと思うんですけれど、前半の“本当にしょうもないエンツォ”から観させらているから、共感の仕方が尋常じゃないんですよね。

 

 

そして、何が他のヒーロー映画と一味違うかというと。愛する人が望んだ人物に、自分がなることを決めて、受け入れた”という部分です。

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エンツォと恋仲になるアレッシア、途中で死んじゃうんですよ。

エンツォが本格的に“正義のヒーロー”として目覚めるのは彼女が死んだあとだと思うんです。

それで、彼はアレッシアが大好きだった“鋼鉄ジーグ(司馬宙/しばひろし)”となのって、人々を悪から守るために動きだす

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エンツォは別に鋼鉄ジーグのファンだったわけではありませんし、司馬宙になりたかったわけじゃありません。でも自分を変えてくれた女性のヒーローになって、彼女が作ってくれたお手製のマスクをかぶって、顔を隠して正義の活動をする。最後、あの“ジーグ”のマスクをかぶった男は何者なんだとローマの人々がなんやかんや言うわけですが、エンツォは気にしない。アレッシアのヒーローとして生きていくことを受け入れたから、幸せなんですよね。

愛情を教えてくれた人のヒーローとて生きていく道を選んだ一人の男性の、なんだろう、美徳というか。愛情が持つ大きなパワーを改めて感じさせてくれた作品でありました。

 

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完全にネタバレしてしまいましたが(ごめんなさい...🙇🙇🙇)ぜひまだご覧になっていない方は観てみてください...!タランティーノ監督が好きな方は、とくにタイプなんじゃないかしら。エンツォにいつのまにか寄り添っている自分に驚かされるのでは?と思います!! ではでは、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグでした〜:)