【東京国際映画祭】映画はこの兄弟から始まった『リュミエール!』カンヌ国際映画祭代表、ティエリー・フレモー監督が語る
こんにちは!Moekaです。
現在開催中の“第30回東京国際映画祭”特別上映作品、
映画『リュミエール!』を観てきました。
私たちが大好きな映画は、1895年のパリで始まった。“映画の父”と呼ばれるルイ&オーギュスト・リュミエール兄弟が撮影した1422本もの作品の中から厳選した108本の映画で構成された映画が今回の『リュミエール!』です。
監督はカンヌ国際映画祭総代表であり、リヨンのリュミエール研究所のディレクターを務めるティエリー・フレモーさん。
今回の上映ではフレモーさんのトークを聴くことができたので、少しご紹介したいと思います。
質問 : なぜ今この時に、リュミエール兄弟の作品で構成された映画を作ろうと思ったのですか?
フレモー監督 : 現在は技術が進み、デジタル化して修復することも可能な時代となりました。フランスではリュミエール兄弟の名前を知っている人はたくさんいますが、彼ららの残した映画を観たことがある人は少ない。2年前から、彼らの120周年だったということもあり、世界中に彼らの作品を観てもらうために修復作業を続けています。(これからすべての映画を修復される予定だそうです。
リュミエール兄弟以前にも映写機を発明しようとした人はたくさんいました。しかし、兄弟が作った“シネマトグラフ”は技術的にも最高のもので、それから新たに発明を試みた人はいないそうです。兄弟は“最後の”映写機発明家であり、そして“最初の”映画監督なのだとか。
しかし、“映画(というか動く写真というか、映写機か(笑))を作った人”というと日本で知名度が高いのはトーマス・エジソンかと思います。フレモー監督は「エジソンとリュミエール兄弟の違いは?リュミエール兄弟が“映画の父”と呼ばれるわけは?」という言及にこのように仰っていました。
(記念撮影を試みるフレモー監督)
フレモー監督 : エジソンが作ったキネトスコープは、箱に閉じ込めてしまいましたね。それで、お金にしようとした。これはアメリカ流ですね。笑
↑キネトスコープ
フレモー監督 : しかし、リュミエール兄弟の作ったシネマトグラフは、スクリーンに映し出すものだった。大勢の人とイメージを共有するものだった。映画館でたくさんの人と作品を共有する。これが映画の姿ではないかと思います。こういうもの(iphoneをさして)で観るのではなくてね。
劇場にいる人とイメージを共有して、そしてその作品について語り合う。今はネットサービスなどで気軽に映画が観れるようになり、それは便利なことではありますが、本来の“映画館でじっくりとその作品を受け取る”という形からは少し遠ざかってしまっているように思われます。ヨーロッパではNetflixに制限がかかっているとかありますしね...“イメージを共有する、作品について想像を膨らませる、それについて考える”映画の観方について改めて学ばされました。
(手の振り方がキュートなフレモー監督と立川志らく師匠)
そして、『リュミエール!』本編なのですけれども。
観て何に感動したかってそれはきりがないですけれど、例えば構図が素晴らしいとか。
でも一番感動したのは、“何気ない生活や街の様子”を、“永遠”にすることができているから。
兄弟が映しているのは自分の子供だったり親戚の子供だったり、19世紀の街並みの様子だったり。上流階級の人々も映せば、労働者階級の子供たちも映します。たくましい動物たちも映します。技術が進むにつれて、世界にも足を伸ばし(日本の京都も訪れていたようです)その当時の様子を演出も加えつつ、でもあるがままに残されているんです。この私たちが普段見ている景色が一つ一つ永遠に残される、その始まりを今観ることができているんだなあと思うと灌漑深い気持ちになりました。
ありふれていそうな景色でも美しく見せる、切り取る。それが映画に限らず詩も、写真も、“芸術”なのかもしれません。
リュミエール兄弟の映像はもちろん、彼らと同時期のカミーユ・サン=サーンスの音楽であるとか、消防車ではなく馬車であるとか(!)お洋服だったり汽車であったり...様々な分野がぎゅっと凝縮されていて、「こんな時代あったんだ...!」と。笑 絶対に見ることのできない景色を修復されてまた目にすることができるというのは、とても嬉しいことですよね!
「映画とは、映画を受け取るというのは、本来の映画の姿というのは」120年前に偉業を成し遂げたリュミエール兄弟のメッセージ、そしてフレモー監督のお話を聴くことができた素敵な日でした!