Bande à pierrot

ティム・バートン、テネシー・ウィリアムズ、アレハンドロ・ホドロフスキー。

【ネタバレ有】『女神の見えざる手』解説 ②ー賢くて強い女性の話?それとも皮肉屋の話?

こんにちは!Moekaです。

前回の記事の続き、映画『女神の見えざる手』について

今回は“なんでこの作品が『新しい映画』だと思ったのか、素晴らしい!”と感じたかについて具体的に書いていきたいと思います。

なぜ素晴らしい(語彙力)のか。それはスローンが美しく敏腕なロビリストでありながら弱い一面を持つ一人の女性であり、そして“悪い”一面が描かれていたこ“勝利”にこだわったということを描かれていたいたこ、ではないかと思います。

 

(この記事は映画『女神の見えざる手』のネタバレを含みます。)

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優秀な女性、だけど...

常に先を先を読む、敏腕なロビリスト。妥協しない。スローンは“強い女性”に見えるけれど...実際はそうじゃない一面もあります。

仕事をするために神経刺激剤に頼っていたり。それに、「キャリアのために手放した人生を想像するために」男性を買うこともあったり。決して完璧な女性ではありません。人のぬくもりが欲しくなるところ。ちょっとした情。それは愚かなことでも弱いことでもありませんが、“弱み”にはなります。『女神の見えざる手』はスローンが鉄の女、というわけではなく、“こういうところもある”と、きちんと“弱味もある”というところを描いていました。

 

それに、ただ単に“銃規制緩和”を支持するおじさんたちを女性が打ち負かす話だったら、『新しい』とは感じないと思うんです。結局おじさんたちの方が頭が固くて、女性の方が倫理的じゃん!みたいな。笑 でも違うのは、“スローンも常軌を逸したところがある”というところ。笑

 

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盗聴器しかけるわ、あんまりデリカシーもなく仲間をダシに使うわ、そういうところがあります。マーク・ストロング演じるCEOに「君はまともだったことないのかよ!?」っていわれる場面も。それに買春は犯罪ですしね...(それについては最後、有罪にはならないんですけれども。)

 

女性対男性の戦いというよりは、「彼女がアメリカを毒で制す」キャッチコピー通りまさに“毒と毒の戦い”でもある。笑 彼女の場合は自分の信じる倫理観に基づいて行動するんですけれども、ちょっと道を逸れてしまう。

だからなんていうんだろう...“すごくフェア”に描かれている気がしたんです。そして最後、彼女はちゃんと罪を償うために刑務所に入る!主人公が善悪はっきりと割り切れないところ、そこもこの作品の魅力なのではないかと思います。

 

それに“強い女性が勝つ”ということではなく、“信念を持った人の行動”に重点が置かれているところ。スローンも超潔白なヒーローじゃないからこそ、作品を通してフェアに映りました。うーん難しい...説明下手でごめんなさい...

 

“勝利”にこだわった女性

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スローンは“勝利”にこだわります。自分の仕事に、目的の達成に。それを強く思うがあまり、「そこまでするの?」っていう行動にも出てしまうわけですが... でも今まで、“勝利”や“信念”のために盲目になるぐらい突き進む女性キャラクターって、あんまりいなかったと思うんです。

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例としてはふさわしくないかもしれませんが、笑 『ナイトクローラー』のジェイク・ギレンホール演じる主人公。彼は“他のやつを蹴散らしたい!”“とにかくとんでもないスクープを撮りたい!”っていって、狂気じみた行動をとり始めるんですよ。『スカーフェイス』のアル・パチーノ演じる主人公(彼は信念とかより野望か...笑)とかも、“強く何かを思いすぎるあまり逸脱していく”“突き進みまくる”キャラクターは男性の方が多かったと思うんです。

だから恋愛感情とかは無しに、「勝利!」「私の信念!」って言ってこだわって突き進む女性キャラクターはすごく新しく感じました。この『女神の見えざる手』は本当の意味で“男と女平等”、人間同士のぶつかり合いを描いている、表している映画なんですよ!!超頭いい美女がめった斬りにする映画じゃないんですよ!いい映画...笑 

 

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あと一個付け足し。

途中でスローンが会社の女性に“皮肉をいう人が皮肉なのよ”っていうシーンがありました。でも、スローンが“銃の所持を断固として反対する理由”。彼女はそれを明確にしていなかったかな、とも思います...曖昧なことも理由なことも嫌いな彼女だけれど、その理由を明言しなかった。(私が見落としていなければ...)

だからもし彼女が「ただ勝ちたい」ためだけに、確固とした理由なしに銃規制派に回っていたとしたら、それはスローン自身も自分自身に矛盾していることになるのかな?とも。いずれにせよ彼女は完璧ではなかったし未熟なところがあった、だからラストは刑務所に入り罪を償い、出てきた時は新しい自分としてまた活動していくのかな?とも思いました。

 

倫理観とは何か?仕事で大切なことはなんなのか?自分は矛盾しているところはないだろうか?行動と言動が伴っていないところはないだろうか?そんな内省を促される作品でもあると思います。いろんな人と話し合いたくなる作品!男性と女性がこのようにフェアであると示す要素をちゃんと含んでいる作品です。思いっきりネタバレしていますけれども...ぜひ観に行ってみてください!