Bande à pierrot

ティム・バートン、テネシー・ウィリアムズ、アレハンドロ・ホドロフスキー。

【記録】2017年映画ベスト10 / 選んだ理由と各作品の感想・考察

今年もこの季節がやってきました!!!#2017年映画ベスト を決める季節が!!!

 

 

 

 

2016年、2017年の公開ラインナップを観て大興奮でした、何より大好きなアレハンドロ・ホドロフスキー監督とジム・ジャームッシュ監督の新作が映画館で観れるとあったので。人気シリーズの新作(ワイスピとかパイカリとか)の最新作も公開されましたし、年度始めは『ラ・ラ・ランド』旋風が巻き起こっていた記憶があります。

というわけで今回は、2017年映画ベスト10なぜその作品を選んだのか、自分の記録として記しておきたいと思います。あくまで個人的な趣味嗜好、タイプ、性癖(笑)が含まれたものですけれど。笑 共感してくださる方がいたらとても嬉しい♡

 

(この記事は各作品のネタバレを含みます。)

 

1. エンドレス・ポエトリー

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個人的2017年年間ベスト1はアレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エンドレス・ポエトリー。極彩色の映像の中で90歳手前のホドロフスキーおじいちゃんが語る人生賛歌。今この瞬間を、マイナスのこともプラスのことも全て肯定して良いのだと。何があるかわからないけれど、「何者かになりたい」そう思う時は背水の陣をしいてでも、前に進まなければならないのだと。強く背中を押してくれる作品で、ラストには涙が止まりませんでした。

自分は来年度からアメリカに映画を学びに勉強するので、恐れ多くもフランスに身一つで旅立つホドロフスキー青年に感情移入した、勇気付けられたというのがベスト1に選んだ理由の1つです。「絶対に死に物狂いで学んで帰ってこよう」と改めて思わせられました。今この瞬間でなくても、人生哲学に大きく影響させられる作品でした。それは様々な分野に精通し、4倍もの年月を生きている芸術家ホドロフスキー監督からのメッセージだったということもとても大きいです。

タイトル『エンドレス・ポエトリー』。物語はそこで終わるけれど、詩はその瞬間を切り取ったもの。人生の大切な瞬間を見つけながら、美しいものを創造できるように生き、どの瞬間を全力で生き、愛していきたい。ホドロフスキー様長生きして!!!

 

2.『ノクターナル・アニマルズ

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トム・フォード監督作品第二作目『ノクターナル・アニマルズ最高でした。オープニングから度肝を抜かれ、途中は目を背けたくなるほどの恐ろしい気分になり、それでもなお美しい世界に恍惚とさせられる。観終わった後は席から立つことができない。それがこの映画です。

様々な解釈がある『ノクターナル・アニマルズ』ですが、私は“創造することへの葛藤の物語”と考えています。小説家、ファッションデザイナー、いわゆるクリエイターや芸術家と言われる方々でしょうか。彼らが何かを創造する上での葛藤が描かれていたと思うのです。

「自分は何かを作り出せる」と信じている自分。「いや、将来性もないしきっと芸術家にはなれない」と思っている自分。芸術家に内在する2人の人格をスーザンとエドワードというキャラクターに投影していたと思うのです。エドワードは最後の最後まで現実世界には登場しませんし、スーザンが忘れっぽいところや今の旦那が途中から登場しないところ、スタッフがかつてスーザンが結婚していたことを知らないことなど細かい疑問がとても浮かび上がってくるのです。(愛か憎しみか?の物語として考えると。)

でもとにかく...トム・フォードの美的センスに、自分の過去や過ちを内省させるような内容に、思い出したくもない過去を思い出させるような荒療治的なシーンに(笑)しっかりしびれてしまいました。もう一度観たいです。

ブレードランナー2049 

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人間は何をもって人間というのか?自分は何をもって自分だと言えるのか?他者の存在があってこそか?心があるからか、どうか?血が通っているから?生きるとはどういうことなのか?人生の中で問いかけ続ける終わりのない疑問。それをドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の圧倒的な世界観の中で描き切った『ブレードランナー 2049

“自分は特別ではないんだ”そんな絶望を感じた後に人のために行動したKの姿は何よりも美しく、涙させられました。“生きるとは何か?”私たちはこのブレランの世界にいるわけじゃないけれど、人間として命を全うするためには今日からどうしていけばいいのか考えさせてくれた作品。衣装も豪華な俳優陣の方々も新型レプリカントも全て格好良くて、個人的にもどタイプ。何度も何度も観返したい作品の一つになりました。

メッセージ 

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これまたヴィルヌーヴ監督作品。大好きヴィルヌーヴ!笑 言語学の話が最初から最後まで面白くて、知的好奇心を大いに刺激されました。私がこの映画を観て考えたのは、「ルイーズは彼ら宇宙人の言語を読み解いていくうちに何が変わったのか」ということ。

使う言語によって考え方が変わる、という話は映画でも説明されていました。宇宙人たちの概念は私たちとは違います。“時間は流れるものではなく、過去も現在も未来も同じ平面上にある”というもの。“時間”について考えるとまたそれはすごく長くなってしまうのですが...その彼らの考え方を受けてルイーズはどう変化したか?彼女は“結果に注目するのではなく、結果に至るまでの過程やその原因”に重きを置くようになりました。その結果の根本的な意味に。

実際にはあの宇宙人たちは今はやってこないと思いますが...笑 私はこの考え方にとても共感したし、物事の本質的な意味を探り続けてこそ、“生きる”ということではないのかなと思わされました。

ウィッチ

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何と美しい映画なんでしょう。

グリム童話を彷彿とさせる、次々と現れる怪しげな登場人物たち。悪夢か現実か見境いのつかない世界観。アーサー・ミラーの戯曲『るつぼ』の台詞を1人で言ってのけてしまうようなトマシンにはただただぞくりとさせられてしまうばかり。そしてラストシーン、宙に浮かんで恍惚とした笑みを浮かべる彼女...

矛盾しているから悪なのか、こういった世界情勢だから魔女狩りをテーマにした作品を作るのか(るつぼが執筆されたのも赤狩りの時代ですし)。社会的な理由もたくさんあるでしょうし、ただ美しいホラー映画としても素敵な作品なのですが。でもベスト10に選んだ理由は、押さえつけられた環境から一気に自分を解放するトマシンの姿に今年最高のカタルシスを感じたから、かな。最高のハッピーエンド。

ネオン・デーモン

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ノクターナル・アニマルズ』を観るまでは「今年ベストかも」と思っていたニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ネオン・デーモン。単純にレフン監督の世界観、美と狂気が入り乱れた映像、ホドロフスキーの『ホーリー・マウンテン』を彷彿とさせる構図、挙句の果てにはカニバリズムや屍姦まで...というストーリーがたまらなく好みということもあります。劇場で一回しか観ていないので、観たその時の「ヤバイイイイ」という余韻が未だに抜けず。笑 だからまた借りてみてみないとな...

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今の個人的な感想を述べると、外見的な美しさばかり繕いたくない。だってただの複製品に食べられちゃうから。レフン監督、敬愛するホドロフスキー監督に「この作品どうっすか?」って見せに行ってると思うと超可愛い。笑

ベイビー・ドライバー

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クールな音楽とカーチェイス、きになるあの子はダイナーの店員、主人公はゲットアウェイ・ドライバー...聞くだけでこんなにワクワクさせられる映画はありません💕 監督は超面白いのに意外と真面目なラストが多い(後始末をちゃんとする)エドガー・ライト監督。どんな作品なのかめっちゃくちゃ楽しみにしていました。

なかなか自分では発掘できない音楽にたくさん出会えて、ベイビーとデボラの恋にドキドキさせられて、脇を固めるキャラクターたちも皆魅力的で。ただ『ベイビー・ドライバー』をベストに入れた理由は「ただのカーチェイス・ミュージカル(町山さん風に)」ではないこと。

いつもサングラスをかけて音楽を聴いて、自分と外の世界を遮断しているベイビー。守りたい人ができてサングラスを外すベイビー。なぜ彼はゲットアウェイ・ドライバーをしなければならなかったのか?ラストは一見ハッピーだけれど、本当にデボラとベイビーは大丈夫と言えるのか?だって、『俺たちに明日はない』のオープニングとほぼ同じ状況だし...まさかアメリカン・ニューシネマのことや人格形成のことについて考えさせられるとは。自分の目でみて耳で聞いてこそ、初めて人生が始まるんだよね、ベイビー!

ダンケルク

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大好きクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク。なんというか、こんなに“引き算”が美しい映画ってなかなかないのではないのでしょうか。

数少ない台詞の中で浮かび上がっていく、メインの青年たちのキャラクター。いくら国のために戦い多くの人を救っても、その人たちが生きて帰れるわけではないという残酷さ。運が良く生き残っていく主人公。果敢に立ち上がってもあっけなく殺されてしまう少年。あの映像とともにそんな戦争の現実を、思っていた以上に打ち付けられた作品でした。最後の主人公の悲しみと一種の絶望に満ちた瞳は忘れることができません。体はダンケルクから帰ってきたけれど、心はまだあの状況に。そして戦争が続く限り、また戦場に赴かなければいけないのだと...

軽い感想を言うと、出演されている方がこれでもかというぐらいタイプだったので、そのあと彼らの関連記事を読みまくってちょっと英語上達した気がします。感謝(?)

マンチェスター・バイ・ザ・シー

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アカデミー賞主演男優賞脚本賞を受賞した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。割と同時期に『ラ・ラ・ランド』が公開されていたような?でも『マンチェスター・バイ・ザ・シー』は上映館も少なかったなあ。

えーっと、普通に地味な映画だと思います。笑 この作品大好きだけれども、地味だとは思うの。笑 画面も鬱々とした寒色の景色。心に傷をおった男と甥の交流をただ淡々と描いていくだけ。だけれどこの作品が好きな理由は「終わらないから」です。物語の一つとして、決着がつかないから

映画は物語の始まりがあり、終わりがあります。でも普段なかなかそんなことないし、この主人公のように深い傷を負ってしまったらそれが癒えることなんて死ぬまでないでしょう。リーはこの映画が終わっても、少しずつ薄れていくかもしれないけれど自分のことを責めるだろうし、夜眠れない時もあると思います。“苦しみも悲しみも受け止めて生きていく”それをリアルに描き切った作品なのではないでしょうか。

一つ面白いと思ったのは、「意外と笑わせにきてる」描写が多いということ。序盤、リーがトイレかどこかを他人の家で修理しているとことか。人生は悲劇的なことも多いけれど、遠目でみたら喜劇に思えてくるものなのかしら。

エル ELLE

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ポール・バーホーベン監督による『エル ELLE』。これ、“変態映画”って宣伝されていたけど...別に変態映画ってわけじゃないでしょ!!

主人公のミシェルには最初からあっけに取られるばかり。レイプされても平気な顔で友人に報告する。女友達の彼氏と浮気する。元旦那の今カノが気に食わなくて意地悪する。終始表情も変わらず、果たして感情があるのかもわからず...そしてミシェルはついにレイプ犯を発見。でもさらにびっくりするのは、彼を受け入れてしまうこと。

そんなミシェルには昔、父親が殺人事件を犯し他という過去が。ミシェルは決して“変態”なのではなく、そのようなトラウマがあったから“自分を隠さないと”生きていけない女性だったのだと思います。自分がどうしたいのかも何を考えているのかも、わからないところがあったのかもしれません。まず彼女が社長を務めているのはアダルトビデオゲーム会社。あれなんて、“隠してる性的欲求”を満たすためのものですし。レイプ犯を受け止めたのは、同じように覆面をかぶることでしか自分自身になれない彼をみて“似た者同士”だと感じたからではないでしょうか。

でもミシェルにも、そんな自分と決別する時が。自分をしばりつける父が死に、母が死に、これではだめだと自分の覆面を最後には殴り捨てます。ミシェルの姿に大きく共感しました。大好き!凛として格好いい、イザベル・ユペール様!

 

 

ベスト10の作品はかなり個人的な理由や単純に好みがありますが。シンプルにもう一回観たいのはマグニフィセント・セブン』や『Dr.ストレンジ』『キング・アーサー』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2』。マグ7は『七人の侍』に触れるきっかけを与えてくれて、1人1人魅力的なキャラクターにワクワクさせられて。『Dr.ストレンジ
』はマーベルの中で一番好きな作品になりました。多次元的宇宙や時間の観念などあんなに一気に考えさせられるとは、そしてそれが映像で見えるとは...出演している方も大好きな人ばっかりで。

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キング・アーサー』ガイリチ流のアーサー王物語、楽しすぎ。笑 ドヤ顔ジュード・ロウ、メンヘラジュード・ロウ、俺様ジュード・ロウ...ジュードが演じる厨二ヴォーティガンに萌え萌え。GotG2は、ずるい!笑 ああいうお父さん系の話には涙腺が崩壊する!笑 音楽も最高でした、以前に引き続き💕

 

来年はどんな映画に出会えるか今から楽しみです。見逃した作品、チェックしなきゃ....