Bande à pierrot

ティム・バートン、テネシー・ウィリアムズ、アレハンドロ・ホドロフスキー。

【ネタバレ】映画『プラネタリウム』はなぜ“プラネタリウム”なのか?キャラクターにはモデルがいた?

こんにちは!Moekaです。

 

今回お話したい映画は9月23日に公開された映画『プラネタリウム』についてです。

ナタリー・ポートマンリリー・ローズ・デップ(父はジョニー・デップ、母はヴァネッサ・パラディ)という超美人二人が姉妹役で共演するということで話題になっていましたね!

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ナタリーがバスタブでリリーちゃんに煙草を吸わせてあげる...それだけでもう「ありがとうございます!」と言いたくなります。今回はこの映画が、決してプラネタリウムが舞台の映画ではないには関わらずなぜ『プラネタリウム』というタイトルなのか?ということについて考えを述べさせて頂きたいと思います。

 

(この記事は映画『プラネタリウム』のネタバレを含みます。)

 

映画『プラネタリウム』舞台・モデルとなった人物

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作品の舞台は1930年代、フランス。ちょうど戦間期ですね。ナタリーとリリーが演じるローラとケイトのバーロウ姉妹(アメリカ人)が、憧れのパリにやってきたところから物語は始まります。

ケイトには霊感があって、なんと死者と交信できる能力が。ローラが演出を手がけて、二人は降霊ショーを行っています。このバーロウ姉妹にはフォックス姉妹というモデルがいるそう。19世紀アメリカでスピリチュアルブームを巻き起こした姉妹だそうです。

バーロウ姉妹と出会い、彼女たちが運命が狂うことになっていく映画プロデューサーがコルベンという男。このコルベンのモデルは、ベルナール・ナタンというフランスでは伝説の映画プロデューサーなのだとか。ベルナールさんはパテというフランスの映画会社を買収し、近代的な映画会社にしようとした方なのだそうです。しかしベルナール・ナタンはユダヤ人でした。なんと最期はあのアウシュヴィッツ強制収容所でむかえたのだとか...

美しすぎる姉妹、ローラ&ケイト

プラネタリウム』の主人公、姉のローラと妹のケイト。二人はかなり異なった人物です。

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姉のローラは野心家。愛する妹と生きていくために何とかしなきゃ!自分たちだけで生きていかなきゃ!という思いがひしひしと伝わってきます。コルベンの映画に出演することになり、じょじょに女優としての道を見つけていくのですが...

この映画のテーマに“人が望むものを見せることができるか”“真実とは本当に見えるのか”というところがあると思います。姉のローラは“人が望むものを見せることができる”天性は無いんです。しかし、妹のケイトにはそれはありました。

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霊を本当に彼女が呼び寄せていたかはわかりませんが、彼女に“相手が望むものを見せることができる”才能はあったということ、それは事実です。物語の冒頭でも、客の女性の亡き息子の声(?)を伝えていましたし、コルベンにも彼の父の記憶(?)を見せていましたから。純粋無垢なケイトは“本物”でした。彼女には、“真実”を見る力があった。

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劇中で、ケイトが天井にある鏡に気づくところがあるんですよ。『白雪姫』でも、「鏡よ鏡...」って鏡は真実を映すものとして描かれていますよね。

では姉妹と関わることになる問題のおっさん、コルベン氏はどんな人物でしょうか。

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映画プロデューサーのコルベン。ちょっといろいろ女関係でも問題があったり?そんなきわどいおじさんではありますが、“できる限り真実を見つめよう”としている姿勢が伺えました。偽りではなく、“本物”を大事にしようとね。だからケイトが霊と交信している映像を撮り、「これはすごいぞ!」って皆に見せるんですけれどその映像は映画にするには使いものにならないほどだめだめ...“偽りのものの方が本当のものよりもお金になる”。そんな皮肉めいたメッセージがある気がします。そんなコルベンには実は秘密が。彼はフランス人と偽っていましたが、実はポーランドだったんですよね。新しい映画に精力的に取り組もうとしていたコルベン、彼がフランス人だったら最後捕えられなかったはず。時代の悲しい影が見えた瞬間でした。

 

なぜ『プラネタリウム』なのか

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さて、なぜタイトルが『プラネタリウム』なのか問題。この“プラネタリウム”というのは、私は姉のローラの生き方をさしていると思います。

ローラは妹のケイトのように、天性で“人が望むことをそのまま見せる”ことはできませんでした。しかし女優という職業につき、演じることによって“人々が生きてみたかった人生、望んでいる世界”を見せることができるようになりました。しかし、ケイトのようには絶対になれない。ケイトの神から授かった才能は手にはいりません。プラネタリウムの星はいくら美しくても、本物の星ではないわけです。だからローラはケイトのことを愛しているけれども嫉妬します。

ですが。そんな才能をもった純粋なケイトは、白血病によってこの世を去ってしまうんですよね...

 

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真実が、本当のものが、いつも曇りなくして見えるとは限らない。明るいところでは見えない星のように。反対にたとえそれが作られたものだとしても、いつも見えるものもある。夢を見させるものもある。プラネタリウムのように、そして映画のように。映画『プラネタリウム』はそんな世の中の常を描いている映画なのかな、と思いました。

 

この作品を手がけたのはフランスの女性監督、レベッカ・ズロトヴスキさん。レア・セドゥ主演の『美しき棘』(2010)長編映画監督デビューされた方です。女性の脆さや少女性の中に秘める危うさ、を描かれる方なんだなと思います。しかしレア・セドゥにナタリー・ポートマンにリリー・ローズ・デップを起用だなんて...羨ましい...(誰)

 

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ちょっぴり難解で、幻想的で、細部までこだわられたお洒落な、切ない映画でした。「期待はせず、希望だけ持って。」最後妹も亡くし、たった一人で生きていくことになったローラの台詞...ちょっと『風と共に去りぬ』をイメージしたのかしら?というわけで、映画『プラネタリウム』のお話でした!