Bande à pierrot

ティム・バートン、テネシー・ウィリアムズ、アレハンドロ・ホドロフスキー。

【考察】映画『裏切りのサーカス』エンディングにて、実はビルもリッキーも「◯◯てる?」

こんにちは!Moekaです。

たぶんこのブログを読んで下さっている方は私のTwitterから飛んできたよ、ていう方が多いのかと思うのですが改めて。私は映画『裏切りのサーカス』(2011)がすっっっっっっっっごい大好きです。本当大好き。笑 スパイの物語としての面白さも、キャスト一覧を見ただけで泣けそうな豪華イギリスの俳優陣も、好きな理由は挙げきれないのですが...大きな理由の一つにこの映画の“エンディング”があります。

〜映画『裏切りのサーカス』のEDについてひたすら語る記事です(超ネタバレ)〜

 

英国諜報部“サーカス”に潜むもぐらを探せ。幹部のティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン、彼らの中に裏切り者がいる。ゲイリー・オールドマン演じるジョージ・スマイリーが、ベネディクト・カンバーバッチ演じるピーター・ギラムと共に追っていく、といったスパイ映画『裏切りのサーカス』。(余談なのですが、原作ではスマイリーは渋いおじさまではなく“ちょっと小太りのおっさん”として描かれています。)この作品はもちろんスパイ達の物語であり、そして“愛”の物語でもあるんですよね。

もぐらの正体をつきとめ、映画の最後には例のエンディングが流れます。曲はスペイン出身の歌手フリオ・イグレシアスによる『La Mer(ラ・メール)』。フランス語で“海”という意味があります。この曲がエンディングで使われていることへの考察は、以前にOriver Cinemaにて記事にしました。めちゃくちゃ熱く語っております。笑

【考察】スパイ映画『裏切りのサーカス』エンディングの有名曲「La Mer」に隠された意味とは? | ORIVERcinema

フランス語の歌詞では海に対する果てしない憧憬を、英語でカバーされた『Beyond The Sea』歌詞では会えない恋人への切ない気持ちを歌っているこの曲。マーク・ストロング演じるジム・プリドーとコリン・ファース演じるビル・ヘイドンの愛、トム・ハーディ演じるリッキー・ターとソ連情報部の女性イリーナの愛、物語の中で同性愛の恋人との別れを経験したギラムの想い、奔放な女性アンを妻に持つスマイリーの苦悩と想い...登場人物たちの様々な切ない愛が、このエンディングでは情緒たっぷりに映し出されていると思います。

今回お話したいのは、またエンディングを観返していて気づいたこと。それは、彼らの「見えない涙」があるということです。ぜひ、YouTubeでエンディングを見ながら読んでいただけたら嬉しいです!笑

 

もぐら騒動が集結し、前奏とともに始まるエンディング。これはおそらくジムの回想でしょう。ゆったり流れる曲と一緒にビル・ヘイドンが登場します。

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恰幅もよく堂々としていて、でも何だかいやらしさを感じますよね。コリン・ファース、『シングルマン』『キングスマン』の時と全く違う...そして、彼は一人の男の姿をとらえます。

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マーク・ストロング扮するジム。『キングスマン』ではマーリン役を演じていますね!マーリンでは完全にスキンヘッドですが、この時は両端に髪の毛がご存命です。このジムはビルの“親友”。ジムは同性愛者なんです。愛しい人の姿をみて、周りに分からないぐらいの微笑みを浮かべるジム。しかし、ビルはちょっとうなずいて、微笑んで去って行ってしまう...

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超切ないこの表情。でもそのあとに、「ま、仕方ないよね」みたいな顔もするんです。切ない!めっちゃ切ない!そしてその後にこのシーン。もぐらである正体をスマイリーに暴かれるビル・ヘイドン。そんな彼のもとに、ジムは向かうわけです。

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「心から愛していた相手は、自分の手で始末をつける」と。ビルもジムに銃口を向けられていることに気がつきます。パーティーの時のように視線を交わし合った後ビルは銃を放ち、ジムに命中...するのですが。

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なんでわざわざ、顔のこの位置にしたんだろう?」って思ったんです。目のしたにあたって血が流れる...これ、涙を流しているようではないですか?謝罪の念か、ジムに対する言い切れなかった想いか。愛し合った相手を殺す、殺される。ジムも撃ち終わった後、涙を静かに流しています。よく見ないと気づかないぐらい、本当に少しだけ。

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ジムと同じようにビルも涙を流していたのではないかと。しかし悲劇に終わったカップルはこの2人だけではありませんよね。リッキー・ターとイリーナもまた悲恋に終わります。

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エンディングで映されるのはずぶ濡れのター。泣いていたとしても、雨で隠されてしまうその涙。ソ連の女性を愛してしまった、スパイという職業...きっとこの雨にまぎれて、ターはイリーナを想って涙していたのではないでしょうか。

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(内股かわいい)

息絶えたビルの上に、木の葉がはらはらと舞い落ちます。これもまた、「心では泣いている」といった感じがしますよね...スパイとして生き、欺瞞の道を進んでいった男の悲しい人生の終わり。最後に残されるのは裸の木だけ。そんなビルの人生が重ね合わされているような気がします。本当にこのエンディングは、サーカス工作員たちの“秘めたる想い”が映し出されていると改めて思うんです。

映画を観ていると「あれ、何でこのシーンこの絵がかかってるの?」とか「何でそこわざわざ映すの?」とか「ここ虫止まってるけど何の意味あるの?」とか、ふと疑問に思うことがたくさんありますよね。それを考えていると新しい発見に出会えることもあるし、より作品を深く知ることも、もっとその映画を好きになることもある。そうして気づいたことを友達と共有したりだとか、自分の中でさらに考えるのも面白いですよね。

裏切りのサーカス』のエンディング、疲れる度に観るぐらい好きなんです。笑 最後のゲイリー・オールドマンの表情がまたいいんですよ...

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「さ、今日も頑張りますかな」みたいな(笑)というわけで今回は、裏切りのサーカス』エンディングで「登場人物たちが実は泣いているのでは?」という考察(といえたものではないけれども)でした!