Bande à pierrot

ティム・バートン、テネシー・ウィリアムズ、アレハンドロ・ホドロフスキー。

『アナザー・カントリー』『裏切りのサーカス』モデルのスパイって誰?コリン&ゲイリーのインタビューも一部和訳!

こんにちは!Moekaです。

 今日は 私が大好きで大好きでしかたがない

 “イギリスのスパイ映画のモデル”についてお話していきたいと思います!

 

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イギリスの映画には、たくさんのスパイが登場しますよね。一番有名なのは英国秘密情報部(MI6)の工作員、『007』シリーズのジェームズ・ボンドでしょうか。あとは元英国諜報部員という経歴をもつジョン・ル・ カレ御大によって執筆されたジョージ・スマイリー』シリーズ。『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』は裏切りのサーカスとして映画化もされていますね。(あとで詳しく触れていきます!)そして近年ではやっぱりキングスマン!このスパイ映画のキャラクターたちには、もちろんモデルがいます。

 

このモデルの人たちをみていくまえに...コリン・ファースがイギリス映画とスパイの関係について持論を述べているインタビューがあったので、一部を和訳しましたのでご覧ください。

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インタビュアー : イギリスのスパイ映画は素晴らしいものが多いですが、スパイ映画とイギリス的であることはなぜ相性が良いのでしょうか?

ファ : 私のデビュー作『アナザー・カントリー』はある意味で、なぜあるタイプのイギリス人がスパイ活動と結びきがちなのか説明している映画なんだ。この作品はイートンやウィンチェスターのようなイギリスのパブリック・スクール(全寮制の私立学校)を舞台にしているのだが、主人公の少年たちはこういったエリートの環境で政治的になっていくんだ。学校の中でじょじょに大きな権力を手にしていくんだよ。年上の少年たちは、厳格な規律を強いる側になっていく。より大きな権力を手に入れるには、学校の選挙で選ばれなくてはならない。彼らは16歳にしてキャンペーンをすることを覚え、生徒たちからの人気を得るために戦略的になることを学んでいくんだ。実際、彼らには政治家や官僚になる将来がある。

しかしそんな環境において、うまく適応できない少年もいる。この『アナザー・カントリー』の舞台は1930年代だ。共産主義革命がヨーロッパに伝播して理想主義的な思想が生まれている時代だった。これはエリート主義のシステムとは反対のものでね。映画でルパート・エヴェレットが演じている主人公は、同性愛者だと自覚する。しかし彼はそれが自分の可能性を狭めてしまうものであることを知っている。だから彼はそれを隠していなければいけないわけだ。ごまかしてこっそりと行動することを覚え、同性愛者である面を世間から隠す...それは自分自身を破壊してしまうような行為なのだけれどね。これは『裏切りのサーカス』にも出てくる話なんだ。

私が演じたビル・ヘイドンは、キム・フィルビーという人物がモデルになっている。このフィルビーは『アナザー・カントリー』でルパートが演じたキャラクター、ガイ・ベネットのモデルになったガイ・バージェスととても親しい関係だった。フィルビーもバージェスもパブリック・スクールの出身で、共産主義的な政治体制に触れ、理想主義となり、そうだな、今でいう過激思想の持ち主となったんだ。

われわれイギリス人はそういった世界...うわべをうまく、大変注意深く取り繕っている世界にルーツがあるんだよ。良いマナー、それに良いスーツは絶好の隠れ蓑なんだ。


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なのだそうです。何だか皮肉な話ですよね...

コリン・ファースの映画デビュー作はこの『アナザー・カントリー』(1984)。コリンはルパート・エヴェレット演じるガイの友人で、共産主義に傾倒する青年トミー役を演じています。このGIFだけでビール一気できそうです。

インタビューに出てきましたが、主人公ガイ・ベネットのモデルとなった人物は実在のスパイ、ガイ・バージェスです。

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イートン校を卒業した彼はケンブリッジ大学へ進学。大学在学中はエリートグループや若者の秘密結社に所属していたそうです。映画『ライオット・クラブ』も実在するらしいですが、本当にこんなグループがあるんですね...

ケンブリッジを卒業したあとはBBCに入社、そしてそのあとは外務省の情報部に所属。スパイになったタイミングは諸説あるようですが、1950年代前半にソ連に亡命したようです。そして映画のガイ・ベネットと同じくバージェスも同性愛者であったとか。

 

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そんなバージェスを語るのに欠かせない組織、それはケンブリッジ・ファイヴ”。1940〜1950年代にかけてソ連のスパイとして活動した、イギリス人のスパイたちです。少なくとも5人のスパイが所属していたことがわかっていて、そのうちの一人はもちろんバージェス。そして『裏切りのサーカス』ビル・ヘイドンのモデルとなった、キム・フィルビーもメンバーです。

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フィルビーも名門ウェストミンスター出身。そしてケンブリッジ大学出身です。バージェスやフィルビー、そして他のメンバーはこのケンブリッジで出会い、共産主義へと傾倒していった、ということですね。

裏切りのサーカス』ビルは最後ジム・ブリドーによって射殺されますが、このフィルビーはソ連に亡命したあと、ソ連が崩壊する直前まで長生きされていたようです。ビル・ヘイドンもジムとの関係にちゃんとけじめをつけていれば、このフィルビーのようにそのあとも生きていたかも...

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だから『アナザー・カントリー』に出演していたコリン・ファースが『裏切りのサーカス』でビル・ヘイドンを演じているというのは、何だか必然的というか、灌漑深いような気がしますよね。

 

裏切りのサーカス』の魅力はまた『007』シリーズとは違って、英国スパイたちの実情や知られざる苦悩をリアルに重く描いているところなのでは、と思います。実際に諜報部に所属していたジョン・ル・カレだからこそ描き出せるあの世界観ですよね。ゲイリー・オールドマンも当時のインタビューで、『裏切りのサーカス』で演じたスマイリーについてこう述べていました。

スマイリーはジェームズ・ボンドとは正反対の人物だね。穏やかで、聡明で、洞察力がある。並外れた記憶力があって順応力が高くて、そんなスパイ活動の探求者なんだ。そして人々の欠点や弱点、誤りやすさを察知する力を持っている。自分のスパイという仕事の暗く酷い側面をちゃんと認識して理解しているけれども、道徳的な男だ。しかし彼の中にも沈んだ悲しみがあるんだ。

こういう人たち(秘密情報部員)は家族にも素性を隠さなきゃいけない。だからボンドが大声で自分のことを周りにいうのは妙だよな...あいつ、会うと必ずこういうだろ。『ボンド。ジェームズ・ボンドだ』って(笑)」

 

確かに言われてみればその通りな気が。笑 ゲイリー・オールドマンはどのインタビューでも、「言いたいことは気にせずいってやるぜ!」という感じが全開で大好きです😂😂 

 

イギリスとスパイの関係。昔から続く伝統、エリート主義の学校、第二次世界大戦、冷戦という歴史...映画には娯楽として、また当時の政治背景を映し出すものとして登場してきましたが、これからも映画史に名を刻む新たなスパイキャラクターたちが生まれるのでしょうか。今回は『アナザー・カントリー』、『裏切りのサーカス』のモデルとなったスパイたちをちょこっとご紹介しましたが、私ももっと勉強していきたいと思います...!

 

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あ、余談ですがル・カレ御大の新作『A Legacy of Spies(原題)』でスマイリーが26年ぶりに復活したようですね!向こうではもう出版されているようですけれど、日本にくるのはいつになるかな...早く読むのが待ちきれないです!