Bande à pierrot

ティム・バートン、テネシー・ウィリアムズ、アレハンドロ・ホドロフスキー。

【ネタバレ】映画『スイス・アーミー・マン』はある意味『ファイト・クラブ』ぽい?“深いい”理由って?

こんにちは!Moekaです。

 

君の名は。』のハリウッド実写化が決まったり『ブレードランナー』のアニメの話題だったり、引き続き『ダンケルク』だったり、大作映画の話題がSNSでは多く見受けられますが、この作品もじわじわと話題になっていますね!ポール・ダノ×ダニエル・ラドクリフスイス・アーミー・マン

 

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私『ハリー・ポッター』が小さい頃から大好きで大好きで...初めて映画にはまりこんだのは『ハリー・ポッター』シリーズなんじゃないかな?てぐらい好きなんです。(ゲイリー・オールドマンのファンになったのは、『アズカバンの囚人』のシリウス・ブラック役が好きすぎて、その俳優さんについて調べたことがきっかけだった気がします♡)まさかダニエル・ラドクリフくんがヴォルデモート卿と同じくらい、顔色が悪くなっているのを見る日がくるとは思っていませんでしたよ...

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さてさて、万能死体とサバイバルという珍作(?)な今作ですけれども、いい話でした。(ざっくりすぎますねごめんなさい。笑)私がこの映画を観て思い出したのはファイト・クラブ』や『ハウルの動く城、そしてシザーハンズ』や『コープス・ブライド』『バットマン リターンズ』といったティム・バートン監督作品。記事ではその理由について述べていきたいと思います。

 

(記事では映画『スイス・アーミー・マン』のネタバレを含みます。)

 

“自分の中に存在する他者”と会話することによって自分の道を見つけていく、または自分の人生の歯車が少しずつ変わっていく、という話はけっこういろんな映画に多いと思います。 子供の時にこういった“イマジナリー・フレンド”がいる人は実際にいるんですよね。(私も小さい頃、会話するウサギとキツネの友達がいました。ガチで。笑 それは私にしか見えませんでした。一人っ子なのでそのウサギの女の子とキツネの男の子と会話をしていました。でも小学校にあがったぐらいから、彼らはいなくなってしまいました。)欧米ではこの概念は子供の成長に役立つとして考えられているようです。『スイス・アーミー・マン』でこの死体のメニーくんは、主人公ハンクの“イマジナリー・フレンド”のようだと思います。死体は話すことはありませんから。笑

 

この映画は遭難した主人公が死体と一緒に戻ってくるサバイバル物語...というよりは、いろいろと世の中でうまくやっていきずらかった主人公が、また自分なりに生きていく方法を見つける物語です。『ELLE/エル』がレイプ被害を描いている映画ではないように、スイス・アーミー・マン』は単にサバイバルを描いている映画ではないと思います。

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「女性の体ってどうなってるの?」「好きになったらどうすればいいの?」メニーくんは人間が成長する時に感じる疑問をハンクに投げかけます。恋をした女性は夫も子供もいる、話しかけられない、隠し撮りをした写真をこっそり待ち受けにしているような“ちょっとヤバい”主人公ハンク。彼は(自分の中の)メニーくんと会話することにより、なんとかして生きていく方法を見つけようとします。時にはお父さんのように、お兄ちゃんのように、そして友達のように、恋人のように(?)メニーくんに接していますよね。

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ハウルの動く城』を思い出したのはこの点です。ソフィーってハウルに対して、おばあちゃんみたいに、お母さんみたいに、恋人みたいに接するじゃないですか。一人の女性だけど、いくつかの役割をハウルに対して担っている。メニーくんに対するハンクの態度をみて、思わずちょっとこのソフィーを思いだしてしまいました。笑

 

ハンクは本当にあの島に漂流していたのでしょうか。漂流していたとしても、きっと生きていたくなかったのでしょう。恋も叶わないわ、お父さんとの関係も微妙だわ、モラルに縛られてる生活は窮屈だわ...自殺願望はあったんじゃないかと思います。(最初、首を吊ろうとしていますしね。)そこになんと死体のメニーくんが現れる。

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ファイト・クラブを想起したのはここです。ハンク(『ファイト・クラブ』でいったら“僕”)の目の前になりたい自分(タイラー・ダーデン)が現れる。メニーは死んでいるし、人前で気にせずオナラもできる。それに、役に立つ(動けないけど)。結局メニーの正体ってちゃんと明かされないじゃないですか。またジェットスキーみたいに最後は消えちゃうし。笑 ハンクは最後人前でオナラもできちゃう(いいのか分かんないけど)ようになりますよね。今までとらわれて窮屈だったモラルを破って、ちょっとだけ“これまでよりも、自分らしい自分”に近づくことができた。ハンクの中のメニーはそれを見届けて、消えていったのかな、と思います。

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ただラストの方はちょっぴり切なくなったというか...ティム・バートン作品を思い出したのはラストの方なんですけれども。『コープス・ブライド』でも、生きている世界より死者の世界の方が楽しそうなんですよね。シザーハンズでも人間の世界におりてくるけれども、結局エドワードがなじむことができなくて、自分の城にこもっている方が居心地が良いバットマンの世界でも、結局バットマンジョーカーもペンギンも似た者同士。マイノリティたちの世界で楽しくやっていく。ハンクも森でメニーと二人で、自分たちの世界で遊んでいるほうが、普通に生活しているよりよっぽど楽しかった。

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途中でクマに追いかけられて、木の上に逃げるシーンがありました。好きな人が自分のことを愛していないと認める。社会の中で生活する。生きていくのはクマと戦うみたいに、怖いことだらけ。だけれど逃げたところで変わらない、戦わなきゃいけない... もうメニーくんはいませんが、あの(自分の中での)サバイバルを通して、ハンクは一歩大人になれたのではないでしょうか。

 

スイス・アーミー・マン』、最初話の内容を聞いた時はまさかこんな風に考える作品とは思っていませんでした。笑 上映館がちょっと少ないようなので...もっと上映拡大されてほしいな、と思います!みなさんは今作を観てどのように考えられましたか??

 

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あ、余談ですけど。“ダンケルク飯”もいいけど、お母さんに怒られても指までなめとる“スイス・アーミー・スナック”も推奨するぞ。笑